現車が製造された1966年と言えばビートルズが日本に来日公演した年になります。まだ記憶されている方も多いことでしょう。
日本国中高度成長時代の真っただ中で、社会生活そのものも大きく変貌していく最中でした。
今回ご紹介する流麗なクーペはそんな時代背景の中、1964年第11回東京モーターショーにてダットサンクーペ1500として登場しました。 翌65年4月に「シルビア」という華麗な名を与えられ、2シーターノッチバッククーペの小型高性能ツーリングカーとしてデビューしたのです。
まさに世界に通用する当時の最新技術が存分に注ぎ込まれる一方で、美しいスタイリングにも力を注ぐ伝統は、後に続くモデルにも継承されスタイリングと高性能技術のバランスの素晴らしさもシルビアならではです。
ちなみにシルビアの名前の由来は、ギリシャ神話に登場する清楚な乙女の名前からだそうです。 いい名前ですね。
もちろん現在では美しかったあの子も年を重ね、齢57歳の淑女というところでしょうか。
機関的にはダットサン フェアレディ1500(SP310、のちに1600cc SP311へと進化)をベースにSUツインキャブ、デュアルエキゾースト、9.0の圧縮比R型1,600ccOHVエンジン(90ps/6,000rpm)を搭載。
また軽くスムーズなダイヤフラム式を新採用、ミッションは国産車初のポルシェタイプシンクロ4速MT。
そしてフロントにはディスクブレーキ、無給油式プロペラシャフト、ロングライフクーリングシステム、傾斜スライドシート、シートベルト等を採用しています。
これら新採用の機構は、当時としては画期的な新技術の採用となり後にフェアレディ1600やその他の日産車に反映され、一般化されたのはその数年後の事となるのですが、当時の日産が情熱ともてる技術のすべてをかけ開発した車であることが伺えます。
いかがでしょう。日産技術陣の気骨がビシビシと感じられますね。
技術の日産の面目躍如というところでしょうか・・・・。
”クリスプルック”(当時日産デザイン室に在籍した木村一男氏がドイツ人デザイナー、アルブレヒト・フォン・ゲルツによる助言を採り入れながらデザインしたものということなのですが、なんと社内コンペでデザイン原案が採用されたとのことです)と呼ばれたボディは「宝石のカット」のように美しいと賞賛されました。
美を追求したボディワークに細心の注意がなされ、ドア、ボンネット、トランク以外には継ぎ目がありません。
クリアでシャープなスタイルを生み出したのは、完全ハンドメイドの職人の手で作られたボディなのです。ラジエターグリルもアルミ削り出しの本格派志向、まさに宝石であり世界を意識した初代シルビアです。
残念ながら美しいルックスには不釣合いなタフな乗り心地(基本的にSP311フェアレディーと同じラダーフレームですからね、海外ではモノコックフレームが主流になりつつあった時代ですし。)や当時120万円という高価格(当時のサニーの2倍相当だそうです)もあり、商業的には成功したとは言えなかったようです。そのため、1968年(昭和43年)6月に554台のみで生産を終了しました。
まあ言い換えれば、それだけ現在の市場において希少性が高く、結果 高価で取引されているということなのでしょう。
まあ国産旧車マニアのためのプリンセスとでも言いましょうかね。
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